OECD - パリ、2022年6月3日
OECDの新報告書によると、世界で排出されるプラスチック廃棄物の量は2060年までにほぼ3倍になり、埋立処分されるのはその約半分、リサイクルされるのは5分の1以下になると予測されています。
「グローバル・プラスチック・アウトルック:2060年までの政策シナリオ(Global Plastics Outlook: Policy Scenarios to 2060 )」よると、需要を抑え、製品寿命を延ばし、廃棄物管理とリサイクルの可能性を向上させる抜本的な対策を講じなければ、プラスチック使用量は人口と所得の増加により約3倍に増加し、それと連動してプラスチック汚染も増加することになります。本報告書では、2060年のプラスチック廃棄物のほぼ3分の2は、包装材、低価格製品、繊維製品などの寿命の短いものから出ると見込んでいます。
マティアス・コーマンOECD事務総長は次のように述べています。「もし我々が、国連環境会議が意欲的に提案しているプラスチック汚染のない世界を望むなら、我々はより厳しい世界的な協調行動をとる必要がある。本報告書が提案している具体策を、プラスチックのライフサイクルに沿って実施すれば、環境へのプラスチック流出を大幅に抑制し、ゼロにすることも可能である」
本報告書は、本年末の完全版出版に先立ち暫定版として公開されました。このダイジェスト版によると、大胆な新政策がとられない場合、世界のプラスチック消費量は2019年の4億6000万トンから2060年には12億3100万トンに増加し、ほとんどの原材料よりも速いペースで増加すると予測しています。プラスチック廃棄物が最も急速に増加するのはアフリカとアジアの発展途上国、新興国ですが、OECD諸国でも2060年の一人当たりの廃棄物は平均年間238kgで、非OECD諸国の77kgを大幅に上回ると見られています。
世界全体では、プラスチック廃棄物の量は2019年の353 Mtから2060年には1,014 Mtに膨れ上がると予測されており、環境への漏出量は2060年には年間44 Mtに倍増し、湖、河川、海洋に堆積されるプラスチック廃棄物の量は3倍以上に増加する見込みです。ほとんどの汚染源は、マクロプラスチックと呼ばれる比較的大きな破片ですが、工業用プラスチックペレット、繊維製品、タイヤの摩耗などから生じるマイクロプラスチック(直径5mm以下の合成高分子)の流出も深刻な問題となっています。
新商品の製造過程で再生プラスチックの利用が増加し、技術の進歩と分野別の経済的な転換が進み、1米ドルの経済生産を生み出すのに必要なプラスチックの量が2060年までに16%減少すると予想されているにもかかわらず、プラスチックの消費量と廃棄量は増加すると予測されています。
プラスチック廃棄物のうち、リサイクルされる割合は2019年の9%から2060年には17%に上昇すると予測されていますが、焼却と埋め立てに回る割合は引き続きそれぞれ約20%と50%を占めると見られています。廃棄物管理システムから外れ、管理されていない廃棄物集積場、露天での焼却、陸域・水域環境への漏出に行き着くプラスチックの割合は、22%から15%に減少すると予測されています。
本報告書は、2022年2月に発表されたOECDのプラスチックに関する初の報告書、Global Plastics Outlook: Economic Drivers, Environmental Impacts and Policy Optionsに基づいています。その報告書によると、プラスチック廃棄物は20年間で倍増し、そのほとんどが埋め立て、焼却、環境への漏出に至っています。この報告書の発表以降、国連加盟国は、プラスチック汚染をなくすために、2024年までに法的拘束力のある国際協定の交渉を行うことを公約しました。
Global Plastics Outlook: Policy Scenarios to 2060 は、2つの潜在的なシナリオの影響を考察しています。一つ目は、OECD諸国を中心とした財政政策と規制政策の組み合わせからなる地域別行動シナリオで、世界のGDPに大きな影響を与えることなく(2060年までに0.3%の下落)、プラスチック廃棄物をほぼ5分の1に減らし、環境へのプラスチック漏出を半分以上減らすことができます。二つ目は、より厳しい政策を世界全体で実施するグローバル行動シナリオで、プラスチック廃棄物を3分の1減らし、環境へのプラスチック流出をほぼ撲滅できますが、世界のGDPは0.8%下落すると試算されています。
また、プラスチックのライフサイクル、化石燃料、気候変動の相互関係を考慮し、温室効果ガスの排出を削減する行動が、プラスチック汚染をどのように軽減できるかを考察しています。
プラスチックの環境負荷を低減し、より循環的な利用を促進する政策には、次のものが挙げられます。
- プラスチック包装材を含むプラスチックへの課税
- プラスチック製品の再利用と修理の奨励
- 新規プラスチック製品における再生材含有量の目標設定
- 拡大生産者責任(Extended producer responsibility, EPR)制度
- 廃棄物管理インフラの改善
- ごみ回収率の向上
OECDのプラスチックに関する取り組みの詳細は、こちらからご覧ください。
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