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Centre for Entrepreneurship, SMEs, Regions and Cities

文化・クリエイティブ部門は、新型コロナウイルス(COVID-19)の危機で最も大きな打撃を受けたが、復興を支えることができる

 

OECD - パリ、2022年6月3日

   

文化・クリエイティブ部門は、新型コロナウイルス(COVID-19)の危機で最も大きな打撃を受けたが、復興を支えることができる

OECDの新報告書、「文化的理解:文化的、創造的な人、場所、産業(The Culture Fix: Creative people, places and industries)」は、雇用とビジネスの成長、社会的結束、地域再生など、危機的状況からの回復の原動力である文化・クリエイティブ部門の重要性と可能性を明らかにしています。

文化・クリエイティブ部門は、雇用と経済活動を生み出し、税収と企業の利益を高めます。OECDの分析によると、企業部門の約7%が文化・クリエイティブ産業に従事しています。2020年には、文化・クリエイティブ部門の雇用は、OECDやEUの一部の国々では20人に1、一部の都市や首都圏では10人に1を占めるまでになりました。これらは、高度な技術を要する仕事です。OECDの分析によると、高等教育の学位を取得している人の割合は、全体で見ると雇用者の40%であるのに対して、文化・クリエイティブ部門の人々では62%を占めています。これらの仕事は「未来に強い」ものです(自動化リスクが高いのは10%、労働全体で見ると14%)。クリエイティブ部門の専門家の平均約40%が、他の産業部門で働いており(例:自動車製造業で働くデザイナー)、経済全体のイノベーションと創造性を促進しています。

文化は、良好なビジネスであるだけでなく、社会をより幸福に、より健全に、より包摂的にするものです。文化活動への参加が増えれば、暮らし(well-being)や健康に良い影響を与えるだけでなく、社会から疎外された人々の統合と包摂を支援し、社会的結束を促すという実証が増えています。また、文化と創造性は、地域の居住地、観光地、投資先としての魅力を高めます。

この部門は危機以前から力強い成長を遂げていました。文化・クリエイティブ部門の企業の成長は、企業経済全体の成長率を上回りました(OECD平均で前者が18%、後者は12%)。また、文化・クリエイティブ分野の雇用の伸びは、ほとんどの国々で全雇用の伸びを上回りました(OECDおよびEU諸国の平均で前者が13.4%、後者が9.1%)。それと同時に、文化に対する需要も旺盛で、レクリエーションと文化に対する家計支出は18%増で、支出全体全体の2倍となっています。

この成長は、政府からの投資が減少しているにもかかわらず実現しています。文化には高い需要がありますが、文化的サービスに対する政府支出はOECD全体で政府支出全体の平均1.2%まで落ち込みました。

さらに、文化・クリエイティブ部門は、新型コロナウイルスのパンデミックから大きな影響を受けています。同分野の世界総付加価値(GVA)に対する全体的な貢献度は、危機の結果、2019年から2020年にかけて約21%低下しました。最近のユネスコの報告書で強調されているように、この産業では世界全体で1千万人の雇用が失われました。さらに、レクリエーション・文化サービスに対する一人当たりの支出は、2020年には前年比で平均約30%減少しました。しかし、パンデミックの影響にはばらつきがあります。ゲームや音楽配信サービスなど、デジタルコンテンツに強いビジネスは、総じて非常に好調でした。公的支援は、パンデミックの打撃を和らげるのに役立ちましたが、標準的な仕事とフリーランスの仕事を組み合わせる労働者など、文化・クリエイティブ部門の特殊性に必ずしもうまく適応していませんでした。音楽など急速に回復している分野もあれば、フェスティバルや美術館など、危機以前の水準に完全に戻るにはさらなる時間が必要な分野もあります。

COVID-19をきっかけに文化を強化することは、OECD諸国のイノベーションと包摂性の観点からの、回復を強く後押しします。文化・クリエイティブ部門は、新製品のデザイン、新しい生産技術、新しいビジネスモデル、観客や消費者にアプローチする革新的な方法、共同制作の新しい形態を通じて、幅広く経済全体に革新とアイデアをもたらします。

報告書の発表に際して、武内良樹OECD事務次長は次のように述べました。「新型コロナウイルスはこの部門に大きな影響を与えた。この部門は、経済と社会を豊かにするが、他の経済部門より軽視されている場合があまりにも多く、それは政策の盲点と言える。文化・クリエイティブ産業の多様なニーズにより強く焦点を当てることは、より力強い回復のための経済社会的恩恵をもたらすだろう」

政府が雇用、社会保障、イノベーション、起業に関する政策を適応させ、これらの分野の労働者、企業、組織のために公平な競争環境を整える措置をとることが極めて重要だと、本報告書は指摘しています。また、政府は的を絞ったアドバイスと資金、文化・クリエイティブ部門のビジネスを経済の他の部門と結びつけて、成長とイノベーションを促進する機会を提供することを提案しています。

   

本報告書はこちらからお読みいただけます。:oe.cd/pub/culture

 

OECDの文化に関する取り組みについては、詳細は下記ウェブサイトをご覧ください。www.oecd.org/cfe/leed/culture.htm

 

報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。Shayne MacLachlan at Shayne.MACLACHLAN@oecd.org or the OECD Media Office (news.contact@oecd.org).