OECD - 東京、2024年1月11日
日本経済は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックから回復したものの、世界貿易の見通しの弱さから、新たな課題に直面しています。財政の持続可能性の確保と生産性の向上、そして急速に進む人口高齢化による経済的・社会的影響への対処に、今こそ政策の焦点を当てるべきです。
最新の「OECD対日経済審査報告書(OECD Economic Survey of Japan)」によると、GDP成長率は、世界的な不確実性が外需の重しとなる一方、主に内需によって牽引され、2023年の1.9%成長の後、2024年は1.0%、2025年は1.1%と着実に伸びるとみられています。消費者物価上昇率は、政府の補助金が終了し、賃金の伸びが勢いを増すことから、2023年の3.2%から2024年には2.6%まで緩やかに下落し、2025年には2.0%で安定すると予想されています。過去約30年で最も高い直近の春闘の結果は、物価の上昇が賃金と消費の増加につながって、インフレ率が政府目標の2%近くで安定するという好循環に入っていくことを示唆しています。
公的債務総額は、パンデミックとエネルギー危機を通して幅広い公的支援が提供されたことにより、2022年には対GDP比245%という空前の水準に達しており、2024年は243%、2025年は242%と、今後数年間はわずかな下落にとどまることが予測されています。財政余力の回復と、債務の持続可能性の確保を優先する必要があります。日本には、歳入の増加と歳出の効率化を含め、公的債務残高を減少軌道に乗せるための信頼できる中期財政健全化戦略が必要です。
歳出の増加を抑制するには、資力調査に基づく富裕層高齢者の自己負担増や、介護の病院以外への移行など、医療・介護制度改革が必要です。歳入を増加させるためには、現在OECD諸国の中で最低水準にある消費税(付加価値税)率を段階的に引き上げるべきです。
投資に対する財政支援制度の改革は、生産性と潜在的成長率を高める上で重要な役割を担う小規模な企業やスタートアップ企業のイノベーションを促進するでしょう。研究開発投資に対する公的支援は手厚いものの、公的研究部門と民間部門との協力強化と、イノベーションのより幅広い拡散が求められています。小規模ベンチャーキャピタルのようなイノベーション資本の状況を改善し、企業の合併買収(M&A)の活用を奨励することも有益です。
マティアス・コーマンOECD事務総長は次のように述べました。「パンデミックが起きた頃、日本は広範な構造改革を進めていた。これらの改革により、女性や高齢者の労働参加率が高まり、日本経済のパンデミックからの回復が支えられるといったプラスの効果がもたらされている。しかし、急速な人口構造の変化は、ますます公共予算を圧迫している。こうした将来の支出圧力に備え、また将来のショックに対する回復力を高めるためにも、債務の持続可能性を確保する改革が必要である。生産性の伸びを回復させることは、イノベーションの促進及び減少する労働力のより有効な活用により、成長を高め、人口問題に対処する上で重要である。」
「働き方改革」を含む過去の労働市場改革は、より柔軟な労働条件を通じた女性の正規雇用の促進や高齢労働者への定年退職ルールの緩和によって雇用を増加させました。人口動態の変化という逆風を抑えるために、特に労働力不足が顕著な分野では、女性と高齢者の労働参加率をさらに高め、有能な外国人労働者をより惹きつけるさらなる取り組みが必要です。家族と子どもに対する支援政策や、労働市場の正規・非正規の二元化解消は、低下傾向にある出生率を反転させ、女性の雇用促進につながります。企業の定年退職年齢(通常は60歳)を設定する権利を廃止すれば、雇用が増え、年功序列型の賃金制度は弱まります。
二酸化炭素排出量の削減とグリーンエネルギー源の拡大にはある程度の進展が見られるものの、日本が2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するのはチャレンジングな課題です。まだ費用効率が良くない革新技術や、原子力発電を見込んだ排出削減策の貢献度には不確実性が伴っています。エネルギー源の開発に関する複数のシナリオを描き、不測の事態に備えて計画を改善することが重要です。電力網の強化によって、電力供給における再生エネルギーの比率を高める現行の取り組みを補強する必要があります。
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