OECD - 2019年2月6日
日本の人口はOECD諸国中最も長寿で、健康リスクの割合も比較的低いため、日本人の健康問題は他のOECD諸国が抱えるそれとは異なっているように見えます。日本人の平均寿命は2016年は84.1歳でOECD平均の80.8歳を4年上回っており、肥満率はOECD諸国中最低、アルコール消費量もOECD平均を大きく下回っています。しかし、日本に健康リスクがないわけではなく、人口高齢化がさらに進めば医療のニーズも高まります。例えば、平均喫煙率はOECD平均を下回っていますが、男性の喫煙率は非常に高く、毎日たばこを吸う日本人男性は30.2%です(OECD全体では23.0%)。受動喫煙率も高く、2016年は飲食店が42.2%、職場が30.9%となっています。その一方で、過剰にアルコールを摂取(1日20g以上)する女性の数が増加しています。このような国民の健康問題は、急速な高齢化によって悪化すると見られています。2050年には、日本の人口の40%近くが65歳を越え、15%が80歳以上になります。こうした人々は慢性疾患に対しても、また例えば公衆衛生緊急事態が起きた際などの健康リスクに対しても比較的脆弱です。この人口高齢化により医療制度の財源がかつてないほど逼迫しているにもかかわらず、日本では国民の健康促進と疾病の早期発見を目的とした健康診断を幅広く取り入れていますが、異常なほど多くの健康診断を頻繁に行っても効果はなく、費用対効果も悪く、有害にすらなりかねません。
有効性を高めるためには、日本は無駄のない予防パッケージに焦点を当て、あらゆる関係者の明確な期待を絞り込み、国民全体を対象としたより強い政策で後押しすべきです。歳をとっても健康で病気に罹らないようにすることを最優先課題にし、また飲酒量の増加や肥満率の上昇など、不健康な行動を取る人の割合が高まる可能性があることに注意を払わなければなりません。日本の予防戦略である健康日本21は、喫煙、飲酒量、健康的な食事といった少数の優先事項と、あらゆる関係者が良質で適切なプログラムを提供するという最低限の期待の設定に焦点を当てることができます。この合理的な戦略を、国民レベルの政策の強化、例えば屋内禁煙の拡大、たばこ製品の販売規制の強化、食品パッケージへの教育的な食品表示の印刷、アルコール製品の販売と入手規制(例えば、ガソリンスタンドでアルコールを販売しない)などによって後押しすべきです。
本書はまた、日本に対して以下の提言を行っています。
- 国民に提供されている健康診断を合理化する-日本の健康診断はほぼ間違いなくOECD諸国中最も幅広く、その全てが疾病の削減または医療コストの削減という意味で医療制度に価値をもたらしているのか明確ではない。
- 健康診断項目の削減を優先すべきだが、その中には全国民に対して行われているがん検診のより良い調整を含むべきである。
- 医療に関わる緊急事態に対する備えを強化するために、関係機関の相互モニタリング、情報共有、体系的調整メカニズムを強化し、より複雑な公衆衛生緊急事態のシミュレーションを行う。
詳しくは、下記のウェブサイトをご覧下さい。
http://www.oecd.org/health/health-systems/oecd-reviews-of-public-health-japan-9789264311602-en.htm
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