OECD―パリ、2019年10月10日
OECDの新報告書、「肥満という重荷-予防の経済学(The Heavy Burden of Obesity – The Economics of Prevention)」によると、肥満に起因する疾病により、今後30年間にOECD諸国で9000万人以上が死亡し、余命がほぼ3年縮まります。また、肥満とそれに関連する症状により、OECD諸国のGDPは3.3%下落し、1人当たり年間360米ドルという重い負担が個人のしかかっています。

本報告書によると、OECD加盟36カ国中34カ国では人口の過半数が太りすぎで、ほぼ4人に1人が肥満です。OECD諸国の成人肥満率の平均は、2010年は21%でしたが2016年には24%に上昇しており、肥満人口が5,000万人増えたことになります。
肥満の代償が特に大きいのは子供です。太りすぎの子供は学業があまり振るわず欠席がちで、成長してからは高等教育を修了する可能性が低くなる傾向があります。また、生活満足度が低く、いじめに遭う可能性が最大で3倍高くなり、それが学業成績の不振につながっている可能性があります。
肥満の成人は、糖尿病などの慢性疾患にかかるリスクがより高く、平均余命も短くなります。EU加盟28カ国では、最低所得層では、最高所得層に比べて女性で90%、男性で50%肥満になりやすく、格差を固定化させる要因となっています。太りすぎが原因の慢性疾患を1つ以上患っている人は、翌年も仕事に就いている可能性が8%下がります。このような労働者が仕事を持っても、欠勤率が最大で3.4%高くなるか、生産性が低くなります。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、次のように述べています。「肥満問題への対応と健康な生活スタイルの推進活動に対する投資を増やすことは、喫緊の経済社会問題である。より良い生活を送れるようにするためにより良い社会、健康、教育政策が求められていることは明らかである。予防に投資することで、政策当局は将来の世代の糖尿病増加を抑えることができ、国にとって利益となる。」
OECD諸国はすでに、医療予算全体の8.4%を肥満から来る疾患の治療に費やしています。これは、年間3110億米ドル、1人当たり209米ドルに相当します。糖尿病の全治療コストの70%、循環器疾患の23%、がんの9%は肥満が原因です。
本報告書に掲載されているOECDの新たな分析によると、店頭に並ぶ食品のラベルを改良したり、子供向けの不健康な食品の広告を規制したりするイニシアチブに投資することが大きな節約になります。肥満予防に投資される1ドルで得られる経済的見返りは、最大6ドルに上ります。
ポテトチップスや菓子類などの高エネルギー食品のカロリー含有量を20%減らせば、年間で100万件以上の慢性疾患、特に心疾患を防ぐことができるとされています。食品やレストランのメニューに栄養表示を掲載したりマスメディアを使ったキャンペーンを展開するといった全人口を対象としたイニシアチブを取ることで、本報告書の分析対象となっている36カ国で2050年までに、5万1000~11万5000年分の寿命が延びることにつながります。これは、EU28カ国とOECD諸国それぞれで、全ての自動車事故による死亡を防ぐことに相当します。経済的コスト削減も相当な金額になり、メニューの栄養表示だけで2020~2050年に最大で130億米ドルを削減することができます。
本報告書と、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、スペイン、英国のカントリーノートは、下記ウェブサイトからダウンロードできます。
http://www.oecd.org/health/the-heavy-burden-of-obesity-67450d67-en.htm
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Spencer Wilson in the OECD Media Office (+33 1 45 24 8 18).
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