OECD - 2021年12月8日
新型コロナウイルスのパンデミックでは特に高齢者に犠牲者が多く出ましたが、OECD諸国全体で年金の支払いは十分に保護されてきました。OECDの新報告書によると、危機に対する異例の政策対応のおかげで、将来の年金受給資格も十分に保護されています。
しかし、「図表で見る年金2021年版(Pensions at a Glance 2021)」によると、高齢化が進み長期的な財政的圧力が続くと見られています。年金財政は、パンデミックの際に年金積立金が失われたために悪化し、その不足分は主に公的予算で補われてきました。 年金制度の基盤を将来に向けて確たるものにするには、苦痛を伴う政策決定が必要になります。

老後の平均余命の伸びは2010年以降鈍化していますが、高齢化のペースは今後20年間で速まると予測されています。生産年齢人口の規模は、日本、韓国の他ほとんどの南欧、中東欧諸国でも、2060年までに4分の1以上減少すると予測されています。
若者は危機の影響を深刻に受けており、特にパンデミックが長期にわたり爪痕を残し彼らのキャリア構築が困難になると、彼らが将来受け取る年金額が減少する可能性があります。チリなど一部の国々で見られるように、経済的困難を補うために年金貯蓄を早期に手にすることを認めることも、長期的に見ると問題となる可能性があります。
過去2年間で、エストニア、ギリシャ、ハンガリー、メキシコ、ポーランド、スロベニアなど、多くの国が所得関連の年金給付を大幅に改革しました。チリ、ドイツ、ラトビア、メキシコも低所得者の所得保護を強化しました。退職年齢に対する措置は限定的でした。スウェーデンは、所得部分の公的年金に関して最低退職年齢を引き上げました。オランダは、計画していた年金支給開始年齢の引き上げを延期しましたが、将来的に平均余命と連動させるペースを落としました。アイルランドは、計画されていた年金支給開始年齢の66歳から68歳への引き上げを廃止しました。デンマーク、アイルランド、イタリア、リトアニアは早期退職の選択肢を拡大しました。
法定措置に基づくと、OECD諸国では通常退職年齢は2060年代半ばまでに平均約2年上昇します。デンマーク、エストニア、イタリア、オランダでは、将来の通常退職年齢は69歳以上ですが、コロンビア、ルクセンブルグ、スロベニアでは、男性の退職年齢は62歳です。コロンビア、ハンガリー、イスラエル、ポーランド、スイスでは、女性の通常退職年齢は男性のそれより引き続き低くなっています。
Pensions at a Glance 2021は、年金の最大の長期的課題は、引き続き将来も財政的および社会的に持続可能な年金を提供することであると述べています。多くの国々で、人口統計学的、経済的、または財務的指標が変化したときに、需給年齢、給付額、拠出率などの年金制度のパラメーターを変更する自動調整メカニズム(AAM)を年金制度に導入しています。この自動調整メカニズムは、老化の影響に対処するために不可欠です。
OECD諸国の約3分の2の国々では年金制度に何らかの形で自動調整メカニズム(AAM)を導入し、退職年齢、給付水準、社会保障負担率を調整し、自動均衡メカニズムを利用しています。OECDの分析によると、自動調整メカニズムに規定されている年金給付額の削減や定年の引き上げを回避するために、何年にもわたって自動調整メカニズムが一時停止または廃止されることさえありました。それでも、裁量的な変更の代替案と比べると、AAMは、比較的安定してより透明性が高く、世代間で公平な変化をもたらせるように、立案、実施することができます。
本報告書と、フランス、ドイツ、イタリア、メキシコ、スペイン、スウェーデン、英国、米国の国別レポートは、下記のウェブサイトでご覧いただけます。
https://www.oecd.org/pensions/oecd-pensions-at-a-glance-19991363.htm.
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。Monika Queisser or Hervé Boulhol of the OECD’s Social Policy division.
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